50周年に向けて(3)

2021.07.29

山路来て 続編 (その3) 「オリジナル開発にもがき苦しむ」

1999年某日、ファウンダーの元にT氏が訪ねて来て一言「素晴らしい発明をして特許を持っている、藤崎電機で商品化出来ないですか?」

T氏は従来にない、機械式脱気装置を発明したのです。特色は長期性能劣化がなくランニングコストが非常に低いこと。特許も取得しており、商品化すれば他社製品に比べ圧倒的にメンテナンス面で有利であり、様々な展開が出来、大きな売上利益を生むこと間違い無いとのこと。

結果的にT氏には顧問に就任していただき、商品化及び市場調査等を進めることにファウンダーの判断で決定。現エンジニアリング事業部の岡村さんが主に設計を担当し、用途を調査し、脱気水は豆やコメへの浸透性が高いことから、豆腐用大豆の水に漬け込む工程の短縮化に使えないかS社阿南工場の協力を得て実証実験をするも、中々思っている効果が出ず撤退。様々な展示会等に出展するも結果的に、販路開拓が出来ず現在も機械装置が倉庫で眠っています。

更に2000年頃、阿南高専に赴任した元K社研究者のF氏が共同研究が出来ないか弊社に来られました。F氏はヨウ素レーザーの国内でも有数の研究者でした。K社で商品化を目指していましたが、K社の撤退が決定し阿南高専にその技術をもって来られたのです。この共同開発についてもファウンダーが了解し、進めることになりました。

ヨウ素レーザーと言っても殆どの方はご存じないと思います。非常に強力でレーザー砲等の兵器利用が主目的として世界で開発が進められていました。弊社ではそのレーザーの特性である波長に着目し、血管結合などに使う医療用の小型レーザー装置の開発を進めることになりました。NEDO・中小機構などの補助金を受けて電気励起式医療用ヨウ素レーザーの開発は始まったのです。
研究は特別チームを結成し、F氏、チェコの物理学研究所よりS氏を招へいし、岡村さん、Yさん、藤崎で進めることになりました。研究2年目には世界初の電気式による、励起現象を確認し、これをレーザー発振に持っていければ非常に大きな可能性を秘めたものが出来ると考えていました。しかし、その後2年間研究を継続しましたがそこからの飛躍には至らず、結果的には4年間の研究にピリオドを打ったのです。

もう一事例、トクナビの開発です。
これはスマホの前身であるGPS機能付きPDAを用いて、トラック等の運行管理システムを開発するプロジェクトを立ち上げました。共同開発として運送会社のS社、システム開発のT社と共に開発を進め、S社での試験導入、さらにはNグループでの採用直前まで行きました。
しかし、後発の携帯を用いた簡易な管理システムが開発され、結果的に技術的優位性が無くなり、新規開発を進めるにも更なる資金が必要となることを踏まえ、3社で撤退することを決定しました。

この3件の開発は共にコア技術は外部で誕生したものでした。即ち、我々の力だけでは課題が発生した場合、自力で解決できなかったのです。この失敗を機にコア技術は自社で開発したもの、あるいは自社で発展出来ることが開発を進める上では欠かせないことをしみじみと感じました。

しかし、この後もオリジナル開発にもがき苦しむ日々が続きます。 《 続く 》

代表取締役 藤崎耕治

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