本との出会い

2022.05.20

新緑が萌え、様々な花々が咲く素晴らしい季節、本と共に時間を過ごしませんか。私と本の出会いは確か5歳ごろです。母が児童文学「小公女」、「巌窟王」などを毎晩読んでくれました。それが姉弟の楽しみで毎日、夜が待ち遠しかったのを今でもよく覚えています。
小学校になると家にある本や学校にあった伝記本などを読み、最初に買った本は確か星新一のSF小説でした。ショートショートの短編SFにワクワクしたのを覚えています。表紙の奇妙な絵にも魅かれたのでしょう。高校や大学では読みやすい半村良、筒井康隆などのSF、赤川次郎などの推理小説などを読み漁りました。

会社員になったある日、近くの書店で一冊の本と出合いました。その本が「タオ自然学」です。高エネルギー物理学研究所のフリチョフカプラ博士が量子力学、東洋哲学、これからの世界について著したものでした。私は虜(とりこ)になり1980年代のニューエイジサイエンスの世界に入っていきました。それは非常に刺激的で私が長く抱えていた疑問の解を提示してくれているように感じました。そして、もう一度学びたいと強く思ったのです。それが後の留学に繋がっていきました。一冊の本との出会いが人生を変えることもあるのです。

MIT留学中にも素晴らしい出会いがありました。その中の一つが「成長の限界」です。これは本の形でなくDr.Stermanの講義で「21世紀中ごろに人類は100億人に到達し成長の限界を迎え、人口はその後激減していく」というシミュレーション結果でした。この話を聞き、私自身初めて世界的な危機を身近に感じ、一技術者としてこの人類の危機的状況を何とかして食い止めたいと考えたのです。その後、ちっぽけな存在である自分にそんな大それたことが出来るのか自信のない日々を送っていた時、気象学者ローレンツのバタフライ効果と言う論文に出会ったのです。ちっぽけな蝶の羽ばたきが将来の気象を変える可能性を証明したものでした。それに救われる思いでした。この出会いが私にも何かできると決意した瞬間です。

留学時代は世界を舞台にした本との出会いが多かったと思います。殆どは日本語で少し原語の小説なども読みました。ジェフリーアーチャーやシドニーシェルドンの世界各国で繰り広げられる人生サスペンス(サーガ)をよく読みました。外国人の名前は覚えにくいものでしたが、それにも徐々に慣れ、それぞれの人が繰り広げるサーガを夜通し読みふけったものです。

日本に帰って、今度は司馬遼太郎、津本陽などの歴史小説に歴史の面白さ、私たちの国について多くのことを学ぶことが出来ました。さらに浅田次郎、井上靖、吉川英治などの描く東アジアの歴史についても少しずつ理解が出来るようになって、世界・東アジア・日本と学び、実際にそれぞれの国を訪問し、その国の人と食事を共にし、人となりを徐々に理解することが出来ました。

現在、不幸なことにロシアがウクライナに侵攻し、多くの悲劇がウクライナの人たちだけでなく世界中の人を巻き込んでいます。この悲惨な状況を変えていくのは世界中の人々が日本・ウクライナ・ロシアと狭く考えるのでなく、同じガイアに住む仲間であると意識することです。世界が直面する温暖化の危機は一方でまたとないチャンスです。人類が共通の課題に向き合うことこそ、このような悲劇を無くしていく唯一の方策であると考えます。これを契機に世界中の様々な本に触れ、そしてそこに出てくる人の思いや考えを共有することによって、皆さんの世界も広がると思います。世界の未来のため読書を通して、見識を深める機会にしましょう。

代表取締役 藤崎耕治